クレーンを見たことがある人なら、大きなフックと小さなフックが付いているのを見たことがあるかもしれません。
現場ではよく、「親フック」「子フック」呼んでいます。
「親と子って何が違うの?」
と聞かれたら、僕はまずこう説明します。
そのフックによって、吊れる重さが違います。
もっと簡単に言えば、人が物を持つときと同じようなイメージです。
片手で持つのと、両手で持つのでは、持てる重さが違いますよね。
今回は現役のクレーンオペレーターである僕が、親フックと子フックの違いや、実際の現場でどう使い分けているのかを紹介します。
見分け方はものすごく簡単(笑)
「親フックと子フックは、どうやって見分けるの?」
これは簡単です。
大きい方が親フック、小さい方が子フックです(笑)。
実際に並んでいるところを見れば、クレーンを知らない人でもかなり分かりやすいと思います。
ただ、大きさだけでなく重量も全然違います。
僕が扱っている25tクラスの一例では、親フックが約230kg、子フックが約60kgあります。
フックだけでも、これだけの重量があります。
※フック重量や仕様は機種によって異なります。
親フックと子フックではワイヤーの掛け方も違う
もう一つ大きく違うのが、ワイヤーロープです。
子フックは1本ですが、親フックは重い物を吊るため、ワイヤーロープを複数本掛けて使用します。
このワイヤーロープの**「掛け数」**が多くなるほど、フックを上げ下げするスピードは遅くなります。
ここが、実際の現場で親フックと子フックを使い分ける理由の一つです。
「最初から全部親フックじゃダメなの?」と思うかもしれない
親フックの方が重い物を吊れるなら、
「最初から全部、親フックで吊ればいいんじゃない?」
と思う人もいるかもしれません。
でも、実際にはフックを上げ下げするスピードが全然違います。
例えば200〜300kg程度の機械を何個も揚重するような作業なら、僕は子フックを使います。
軽い物を何度も吊る場合、上げ下げの速い子フックの方が作業をスムーズに進められるからです。
重い物を吊れるフック=いつでも便利というわけではありません。
同じ現場でも途中で親フックに変えることがある
例えば、機械の揚重をしているとします。
最初の20個は200〜300kg程度。
ところが、
最後の1個だけ6t。
こんなこともあります。
最初の軽い機械は子フックで揚重して、最後の重量物になったら親フックを使用します。
「フックを変えるのって大変そう」
と思うかもしれませんが、僕の感覚ではまったく手間ではありません。
使用するフックに合わせてクレーン側の過負荷防止装置などを適切に設定し、子フックを巻き上げて親フックを使用します。
もちろん実際の設定や操作は、機種・仕様・メーカーの取扱方法に従って行います。
子フックで吊れる重量でも、僕は親フックを使うことがある
ここからは、オペレーターによって考え方が違うと思います。
例えば僕が扱っている25tクラスの一例では、子フックは4t未満の荷物で使っています。
ただ僕の場合、3.5tくらいになってくると親フックを使うことがあります。
限界に近いところまで子フックを使うのではなく、ワイヤーロープへの負担なども考えて余裕を持たせたいからです。
特に高価な機械の場合は、重量以外のことも考えます。
職人さんに、
「重量も子フックで吊れる範囲の上限に近いですし、とても高価な物なので、ゆっくり持っていきたいので親フックでいいですか?」
と聞いたこともあります。
すると、
「そこまで気を遣ってくれてありがとう」
と言ってもらったこともありました。
何でも速く吊ればいいわけじゃない
僕は、クレーンの仕事は何でも速く揚重すればいいわけではないと思っています。
例えば自分が元請けや手元の立場で、とても高価な機械を搬入するとします。
いくら安全だと言われても、その機械を速い動きで揚重されたら、僕だったら嫌です。
だから、
「自分が手元だったらどう思うか」
「自分が元請けだったらどう感じるか」
ということを考えながら操作しています。
これは誰かから教えてもらったわけではありません。
自分で現場を経験する中で、そう考えるようになりました。
安全に作業するのはもちろんですが、
周りの人が安心して見ていられるように動かす。
それもクレーンオペレーターに必要なことだと僕は思っています。
実は「親と子」を同時に使った経験もある
親フックと子フックは、どちらか一方だけを使うイメージがあると思います。
しかし僕が経験した現場では、
「オペさん、これ親子で吊って」
と言われることもありました。
例えば大型の機器が、輸送時の高さの関係でトラックに横向きで積まれて運ばれてくることがあります。
設置するときには、その機器の姿勢を変えたり、横向きの状態から垂直方向へ起こしたりする必要がある場合があります。
そういった作業で、親フックと子フックの両方を使用した経験があります。
僕が経験したケースでは、急いで動かすのではなく、合図に合わせながらゆっくり作業することが多かったです。
親子吊りについての注意
ここは非常に重要です。
親フックと子フックを同時に使用する作業は、「親と子が付いているから自由に同時使用できる」というものではありません。
使用するクレーンの仕様やメーカーの定め、作業計画、荷重条件、玉掛け方法、現場の安全ルールなどを十分に確認したうえで、適切な方法で行う必要があります。
ここで紹介しているのは、あくまで僕自身が経験した現場の一例です。
親子吊りの具体的な作業方法を紹介するものではありません。
実際の作業では、そのクレーンや現場で定められた安全な作業方法に従うことが大切です。
まとめ|親と子にはそれぞれ役割がある
親フックと子フック。
名前だけ聞くと難しそうですが、見分けるだけなら簡単です。
大きい方が親、小さい方が子(笑)。
ただし、その中身にはちゃんと理由があります。
親フックは重量物を扱うために複数本のワイヤーロープを掛けて使用することがあり、その分、上げ下げの速度は遅くなります。
一方、子フックは軽い物を何度も揚重するときなどに使いやすい。
だから現場では、「重い=親、軽い=子」だけではなく、荷物や作業内容を見ながら使い分けています。
そして僕が大切にしているのは、
「吊れるかどうか」だけで考えないこと。
速く作業できるとしても、高価な機械ならあえてゆっくり動かす。
自分が相手の立場だったらどう感じるのか。
そんなことまで考えながらレバーを操作するのも、クレーンオペレーターの仕事だと思っています。



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