クレーンには「親フック」と「子フック」があります。
普段の現場ではどちらか片方を使うことが多いですが、作業内容によっては親フックと子フックの両方を使う「親子吊り」をすることがあります。
自分もこれまで、
- タンクを寝た状態から立てる作業
- 美術館の作品を立った状態から寝かせる作業
- 鉄骨の柱を寝た状態から立てる作業
などで親子吊りを経験してきました。
今回は、親子吊りとはどんな時に使うのか、自分が実際に経験した現場を交えながら紹介します。
※この記事は自分が実際に経験した現場について書いたものです。実際のクレーン作業では、使用する機種・吊り荷・重心・玉掛け方法・現場条件などによって作業方法は異なります。必ず機械の仕様や作業計画、現場のルールに従って作業してください。
親子吊りとは?
親子吊りとは、その名前の通り、クレーンの親フックと子フックの両方を使って荷物を扱う作業です。
自分が親子吊りを使った経験では、単純に荷物を上へ吊り上げるというより、
寝ている物を立てる
立っている物を寝かせる
といった、荷物の姿勢を変える場面で使うことがありました。
親フックと子フックについて詳しく知りたい方は、以前書いた「親フックと子フックの違い」の記事も参考にしてみてください。
25tクレーンでタンクを立てた時の親子吊り
自分が経験した親子吊りのひとつが、工場の敷地内で行ったタンクの作業です。
使用したのは25tクラスのクレーンで、タンクの重量は約800kgでした。
タンクはトラックに寝た状態で載っていて、それを立てる作業でした。
頭側と足側に親フックと子フックを使い、現場の合図に合わせながら作業しました。
作業前には、
「どちらを先に動かすか」
について現場の人と打ち合わせをしています。
作業場所はよく見える場所でしたが、それでも無線を使い、合図を確認しながらゆっくり進めました。
途中ではチェーンブロックも使用し、荷物のバランスを見ながら作業しています。
正直なところ、自分の感覚ではこの作業自体を「ものすごく難しい」とは感じませんでした。
親フックと子フックを同時に一気に動かすような作業ではなく、合図に合わせて落ち着いて進められたからです。
ただ、タンクが寝た状態から立ち上がる瞬間は少し緊張しました。
親子吊りだから特別難しいというより、荷物の姿勢が大きく変わる作業なので、やはり慎重さは必要だと思います。
美術館では作品を立った状態から寝かせた
もうひとつ印象に残っているのが、美術館での作業です。
展示期間が終了した作品を、立った状態から寝かせてトラックへ積む作業でした。
この時も親子吊りを使いました。
タンクとは逆で、
寝ている物を立てるのではなく、立っている物を寝かせる
という作業です。
この現場で一番感じたのは、重量とはまた違った緊張感でした。
美術品は、基本的に二つとして同じ物がありません。
機械や資材であれば同じ製品が存在する場合もありますが、美術作品はそうではありません。
もし傷を付けたり壊したりすれば、取り返しがつかない。
そのことを考えると、やはりかなり緊張しました。
クレーンの仕事では重量物を扱う緊張感もありますが、こういう**「絶対に傷を付けられない物を吊る緊張感」**もあります。
今でも印象に残っている現場のひとつです。
狭い駅前で鉄骨柱を立てたこともある
鉄骨工事でも親子吊りをした経験があります。
その時は、寝た状態の鉄骨柱を立てる作業でした。
現場は駅前で、作業できるスペースがかなり狭い場所でした。
子フックだけで柱を起こした場合、荷物の動きが大きくなって周囲へぶつけてしまうのが心配な状況でした。
そこで、その現場では親子吊りを使って柱の姿勢を変えました。
この作業も、急いでやるのではなく、ゆっくり進めていたので、自分としては特別難しいとは感じませんでした。
ただし、周囲に余裕がない場所だったので、
「荷物を暴れさせない」
「周囲へぶつけない」
ということは強く意識していました。
親子吊りは「難しい作業」というより慎重さが大事
「親フックと子フックを両方使う」と聞くと、かなり難しい作業に感じる人もいるかもしれません。
自分の経験では、必ずしもそうではありません。
もちろん現場条件や吊り荷によって難易度は大きく変わりますが、自分が経験した現場では、
事前に動きを打ち合わせる
合図をしっかり確認する
急がずゆっくり作業する
ということの方が重要だと感じました。
特に親子吊りでは、オペレーターだけが分かっていても作業はできません。
玉掛けをする人、合図をする人、クレーンオペレーターが、
「次にどちらを動かすのか」
を共有していることが大切です。
自分がタンクを吊った時も、見通しの良い現場でしたが、無線を使って作業しました。
見えているから無線はいらない、ではなく、確実に意思を伝えながら進める方が安心できます。
親子吊りを使う理由は現場によって違う
自分が経験した3つの現場だけでも、親子吊りを使った理由は少しずつ違いました。
タンクでは、寝た状態から立てるため。
美術館では、立っている作品を寝かせてトラックへ積むため。
鉄骨では、狭い場所で柱の姿勢を慎重に変えるため。
同じ「親子吊り」でも、現場によって目的は違います。
だからこそ、
「親子吊りはこうやるもの」
とひとつのやり方だけで考えるのではなく、その荷物や現場に合った作業計画が必要になります。
まとめ
今回は、クレーンの親子吊りについて、自分が実際に経験した現場を紹介しました。
自分がこれまで親子吊りをしたのは、
- 約800kgのタンクを寝た状態から立てた現場
- 美術館の作品を立った状態から寝かせた現場
- 狭い駅前で鉄骨柱を寝た状態から立てた現場
などです。
親子吊りは、親フックと子フックの両方を使うため、一見するとかなり難しそうに見えるかもしれません。
ですが、自分の経験では、無理に急がず、事前に動きを打ち合わせて、合図に合わせて落ち着いて作業することが大切だと感じています。
特に印象に残っているのは美術館での作業です。
美術品は二つとして同じ物がなく、失敗すれば取り返しがつきません。
クレーンの仕事は「重い物を吊る仕事」というイメージが強いですが、実際には、荷物の価値や周囲の状況によって緊張するポイントもまったく違います。
こういうところも、クレーンオペレーターという仕事の面白さのひとつだと思います。



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