クレーン作業では、オペレーターだけで作業することはできません。
特に重要なのが、クレーンオペレーターに荷物の動きを伝えてくれる合図者です。
現場では初めて一緒に作業する人もいれば、何度も一緒に仕事をしている人もいます。
いろいろな合図者と仕事をしていると、
「この人の合図は分かりやすいな」
逆に、
「この人の合図はちょっと怖いな」
と感じることがあります。
今回は、実際にクレーンを操作している僕が、合図者のどんなところを見ているのかを書いてみます。
やりやすい合図者は「伝えよう」としてくれる
初めて一緒に作業する人でも、何回か合図を受けていると、
「この人はやりやすそうだな」
と感じることがあります。
僕がやりやすいと感じるのは、こちらに分かりやすく伝えようとしてくれる人です。
ジェスチャーの大きさや手の動かし方ももちろんあります。
でも、それ以上に、
「オペレーターからどう見えているのか」
を考えながら合図を出してくれる人は、すごく分かりやすいです。
合図はただ手を動かせばいいわけではなく、相手に伝わって初めて意味があると思っています。
手を速く動かされると「急かされている」と感じることもある
逆に、
「ちょっとやりにくいな」
と感じることもあります。
例えば、手をものすごく速く動かして合図する人です。
本人は普通に合図しているつもりかもしれません。
でもオペレーター側からすると、
「もっと速く!もっと速く!」
と急かされているように感じることがあります。
もちろん、僕は合図が速いからといって無理にその速度に合わせることはありません。
「この速度で動かしたら危ない」
と感じれば、ゆっくり操作します。
必要であれば一度作業を止めます。
そして危険な理由を説明して、
「ここはゆっくり持っていきます」
と伝えてから作業を続けることもあります。
合図者の指示は大切ですが、実際にクレーンを操作している側から見える危険もあります。
危ないと思ったときに、無理に相手のペースに合わせることはしません。
僕は見える場所でも無線機の方がやりやすい
吊り荷が見えない場所で作業するときは、無線機を使わせてもらっています。
例えば建物の裏側など、運転席から吊り荷が見えなくなる場所です。
そういう作業では、合図者から無線で状況を伝えてもらいながら操作します。
ただ、僕自身は吊り荷が見える場所でも、無線機を使ってもらった方がやりやすいと感じます。
手合図の場合、合図者は合図を出すために手を使います。
無線であれば言葉で伝えられるので、合図者側も合図のために片手が塞がりません。
もちろん無線を使えば何でも伝わるわけではありません。
無線でも、どう伝えるかがかなり重要です。
「もっとコースラー」より「あと5mコースラー」
無線で合図をもらうとき、僕がやりやすいのは具体的に伝えてくれる人です。
例えば荷物を巻き下げているとき、
「もっとコースラー(巻き下げ)」
と言われるより、
「あと5mコースラー」
と言ってもらった方が圧倒的にやりやすいです。
さらに、
「あと3m」
「あと1m」
と残りの距離を伝えてもらえれば、オペレーター側も着地点をイメージできます。
あと5mあるなら、ある程度の速度で巻き下げる。
3m、2mと近づいてきたら、徐々に速度を落としていく。
残りの距離が分かれば、こちらも次の操作を先読みできます。
「もっと」「もう少し」だけでは、その「もう少し」が50cmなのか5mなのか分かりません。
具体的に伝えてくれる合図者は、すごく作業がやりやすいです。
吊り荷が見えないときほど合図者を頼りにする
オペレーターから吊り荷が見えない作業は、特に慎重になります。
クレーン作業では、事前に現場の状況を確認する「現調」も重要です。現調で実際にどんなところを確認しているのかは、こちらの記事で詳しく書いています。
作業前の打ち合わせで、
「ここには障害物がある」
「この辺には電線がある」
と確認している現場もあります。
そんな状況で吊り荷が見えなくなり、無線からいきなり、
「高速コーゴー(巻き上げ)!」
と言われると、
「本当にそんなに巻いちゃって大丈夫?」
と思うことがあります。
実際に不安になって、
「本当に巻いちゃって大丈夫?障害物ありましたよね?」
と確認したことがあります。
すると、
「ごめん、やっぱり左旋回してから巻いて」
と言われたこともありました。
吊り荷が見えない以上、オペレーターは合図者から入ってくる情報を頼りに操作します。
だから合図者には、吊り荷だけではなく、その先の障害物や周囲の状況まで見てもらいたいと思います。
そしてオペレーター側も、
「本当に大丈夫かな?」
と思ったら、そのまま動かさず確認することが大切だと思っています。
右と左が逆になる合図は怖い
もう一つ怖いのが、旋回方向の認識が合っていないときです。
右なのか左なのか。
ここを間違えられると、オペレーターとしては怖いです。
合図者から見た右・左ではなく、クレーン側から見てどちらへ動かすのかを合わせておく必要があります。
慣れていない人だと、途中で右と左が分からなくなってしまうことがあります。
実際、あまりにも方向が分からなくなって、
「山側に旋回!」
「海側に旋回!」
と言われたこともあります(笑)。
山と海が分かる現場なら、それはそれで伝わるのですが(笑)、大切なのは呼び方ではありません。
オペレーターと合図者の間で、どちらへ動かすのかが確実に共有できていること。
これが重要です。
複数人から合図されたら、一人に決めてもらう
現場では、複数の人から合図を出されることもあります。
同じ場所にいる二人、三人からそれぞれ合図を出されると、
「誰の合図を見ればいいの?」
となってしまいます。
まして、それぞれ違う合図を出されたら危険です。
そのため僕は、同じ場所から複数人が合図を出している場合は、合図者を一人に決めてもらうようにお願いしています。
「この人の合図を見る」
とオペレーター側も分かっていれば、迷わず操作できます。
屋上への揚重では「3者無線」を使うこともある
一方で、複数人が無線を持って作業することもあります。
例えば、地上から屋上へ何度も材料を揚重する現場です。
こういった場合は、3者無線を使うことがあります。
無線を使うのは、
屋上の合図者
地上で玉掛けをする人
クレーンオペレーター
の3人です。
地上で玉掛けが終わったことや、荷物が上がっていく状況、屋上で荷物を受け取る状況などを共有しながら作業できます。
これは複数人が好き勝手に合図を出すのとは違います。
それぞれが状況を共有しながら作業するので、離れた場所への揚重では非常にやりやすい方法です。
慣れた合図者なら「声のトーン」でも分かる
何度も一緒に作業している合図者とは、だんだんお互いの感覚が分かってきます。
中には無線で話している声のトーンだけで、「もうすぐ地面につくな」と分かる人もいます。
同じ「コースラー」という言葉でも、まだ距離があるときと、着地直前では言い方が少し違うんです。
何度も一緒に仕事をしていると、その違いが分かるようになります。
そういう合図者とは、こちらも次の動きを予測しやすく、とても作業がやりやすいです。
逆に、初めて一緒に作業する合図者の場合は、相手のクセがまだ分かりません。
そのため僕は、いつも以上に慎重に操作するようにしています。
最初の何回かのやり取りで、お互いの感覚を少しずつ合わせていく感じです。
一番大事なのは「オペレーターから見える位置に立つ」
もし新人の合図者から、
「どういう合図を出せばオペレーターはやりやすいですか?」
と聞かれたら、僕はまず、
「オペレーターからちゃんと見える位置に立ってください」
と伝えます。
どれだけ分かりやすい手合図を出していても、オペレーターから合図者が見えていなければ意味がありません。
これ、実は現場ではかなりの**“あるある”**です。
合図者本人は、
「ここなら見えているだろう」
と思っていても、運転席から見ると建物や資材、吊り荷などに隠れて見えないことがあります。
オペレーターからすると、
「合図が見えない……」
ということは結構あります。
手合図の上手さ以前に、まず自分がオペレーターから見えているかを意識してもらえると、とてもやりやすいです。
合図者が見えなくなったら、僕はすぐ止める
手合図で作業していて、途中で合図者が見えなくなったら、僕はすぐにクレーンを止めます。
「さっきまで巻けの合図だったから、もう少し動かしておこう」
とは考えません。
なぜなら、合図者が見えなくなった場所で、もしかしたら**「止めろ」の合図を出しているかもしれない**からです。
そのまま動かし続けてしまえば、
「なんで合図と違うことをやってるの?」
となります。
オペレーター側からしても、
「合図が見えないなら、まず止めろ」
という話です。
もう一度合図者が見える位置に移動したり、状況を確認したりしてから作業を再開します。
分からない状態で、
「たぶん大丈夫だろう」
と動かし続けるより、一度止めて確認する方がいいと思っています。
合図が上手い人は周囲がよく見えている
今までいろいろな合図者と一緒に仕事をしてきました。
その中で、
「この人は本当に合図が上手いな」
と感じる人には共通点があります。
それは、視野が広く、周囲の状況までよく見えていることです。
吊り荷だけを見るのではなく、その先に障害物がないか、電線は大丈夫か、周囲の状況はどうなのか。
オペレーターから見えない部分まで確認しながら合図を出してくれる人は、こちらも安心して操作できます。
そして最初にも書きましたが、僕が大切だと思うのは、
「ちゃんと相手に伝えようとしてくれること」
です。
最初から完璧な合図ができなくても、オペレーターから見える位置に立って、分かりやすく伝えようとしてくれる。
何度も一緒に仕事をしているうちに、
「この人、本当に合図が上手いな」
と感じるようになる人は、そういう人が多いと思います。
まとめ|合図はオペレーターへの「指示」だけではない
クレーン作業では、合図者とオペレーターが離れた場所にいることも珍しくありません。
吊り荷が見えない作業では、オペレーターは合図者から伝えられる情報を頼りにクレーンを操作します。
だから僕がやりやすいと感じるのは、
オペレーターから見える位置にいる。
「あと5m」など具体的に伝えてくれる。
吊り荷だけではなく周囲の状況も見ている。
そして何より、
「オペレーターにちゃんと伝えよう」としてくれる。
そんな合図者です。
逆に、合図が見えなくなったり、指示に不安を感じたりしたときは、一度止めて確認します。
クレーンオペレーターと合図者は、離れた場所にいても一緒に一つの荷物を動かしています。
だから僕は、合図は単なる「指示」ではなく、
お互いが安全に作業するためのコミュニケーション
だと思っています。



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