クレーンの仕事をしていると、作業前に**「現調」**へ行くことがあります。
クレーンを知らない人から、
「現調って何するの?」
と聞かれたら、僕は、
「現場に何tのクレーンで作業できるのか、現場がどんな状況なのかを見に行くこと」
と説明します。
クレーンは、吊り荷の重量だけ分かれば手配できるわけではありません。
現場までクレーンが入れるのか。
どこにセットするのか。
地盤は大丈夫なのか。
作業半径は何mなのか。
電線などの障害物はないのか。
こういったことを実際に現場へ行って確認し、当日の作業を考えるのが現調です。
今回は、僕が実際に現調へ行ったときに何を確認しているのかを書いてみようと思います。
現調は現場に着く前から始まっている
僕の場合、現調は現場に到着してから始まるわけではありません。
現場へ向かっている途中から始まっています。
まず見るのが、当日クレーンが通る進入ルートです。
道幅、曲がり角、高さ、大型規制、時間規制。
実際にクレーンがその道を通って現場まで行けるのかを確認しながら向かいます。
乗用車なら簡単に通れる道でも、大きなクレーンではそうはいきません。
現場で作業できる能力があったとしても、そもそもクレーンが現場まで入れなければ作業はできません。
だから進入ルートは、僕が現調で特に重要だと思っている部分です。
大きなクレーンでは「待機場所」も探す
さらに大きなクレーンの場合、もう一つ考えていることがあります。
それが待機場所です。
大きなクレーンになると、早く現場付近へ着いたからといって、コンビニなどの駐車場で簡単に待機できるわけではありません。
そのため現場へ向かいながら、
「当日はどこで待機できるかな?」
というところも探します。
クレーンが現場へ入れるかだけではなく、作業開始までどこで待機するのか。
こういうところまで考えることがあります。
現場に着いたら、まず「お客さん」を見る
現場に到着してお客さんがいれば、僕はまずお客さんを見ます。
これはクレーンに乗って実際に作業するときも同じです。
話をしながら、
「ささっと現調して帰りたい人なのか」
それとも、
「時間をかけて、かなり細かく確認してほしい人なのか」
その人がどんな感じなのかを、なんとなく見ています。
現調した僕が、必ず当日のクレーンに乗るとは限りません。
別のオペレーターが担当することもあります。
そんなときは、
「このお客さんなら、このオペレーターと合いそうだな」
と考えて担当するオペレーターを選ぶこともあります。
クレーンの仕事は機械を扱う仕事ですが、結局は人と人で仕事をするので、こういう部分も意外と大切だと思っています。
次にクレーンのセット場所を考える
お客さんと話をしながら、現場そのものを確認していきます。
まず、
「クレーンをどこに置けるのか」
を考えます。
例えば建物の上へ資材を揚重するのであれば、建物の高さも確認します。
そして、
電線などの障害物はないか。
地盤は大丈夫なのか。
そういったものを見ながら、頭の中で実際の作業を組み立てていきます。
「置けるスペースがある=セットできる」ではない
クレーンを置けそうな広い場所があったとしても、それだけではセット場所を決められません。
特に気をつけているのが足元の状態です。
僕ができるだけセットしたくないのは、
インターロッキング、マンホール付近、ピットなどの空洞、側溝付近などです。
インターロッキングなら、クレーンをセットすることで傷めないように、
「養生をどうするのか」
というところまで考えます。
クレーン本体が置けるだけではダメです。
アウトリガーをどこに張るのか。
そして、その下がどうなっているのか。
そこまで確認してセット場所を考えます。
クレーンを安全にセットするためには、地盤の確認だけでなく、アウトリガーをどこまで張れるのか、敷板や鉄板をどう使うのかも重要です。アウトリガーについては、こちらの記事で詳しく書いています。
見た目では分からなかった「全面ピット」
以前、現調へ行った現場で、クレーンをセットする予定の場所を確認したところ、地面の下がピットになっていたことがありました。
しかも一部分ではありません。
セットする場所が全面ピットでした。
元請けさんにクレーンを設置した場合の荷重などを確認してもらった結果、その場所にはクレーンをセットできないことが分かりました。
そこで作業方法を変更しました。
最終的には、建物の反対側の道路を通行止めにして、道路からクレーンをセットして作業しました。
もし現調をせず、当日クレーンが来てから、
「ここにはセットできません」
となっていたら、その日の作業ができなかった可能性があります。
現調は予定していた場所にクレーンを置けるか確認するだけではありません。
ダメだった場合に、別の方法を考えるためにも重要だと思います。
電線がある現場は多い
クレーン作業では、電線がある現場も多々あります。
大抵の場合、電線越しに揚重するような状況になります。
そのため現調では、
電線に防護管を取り付けてもらえるのか。
そして、
クレーンのブームが電線からどのくらい離れるのか。
といったところを確認します。
荷物が目的の場所まで届けばいいわけではありません。
ブームや吊り荷がそこまで移動する途中に何があるのかも重要です。
もちろん、防護管があるから電線へ近づいていいという意味ではありません。
実際の作業では、現場のルールや関係者との打ち合わせ、必要な離隔などを確認したうえで作業します。
現調に持っていく道具
僕が現調へ行くときに基本的に持っていくものは、
レーザー距離計、スケール、カメラ、クレーンの性能表です。
レーザー距離計やスケールで高さや距離を測ります。
カメラでは現場の状況を撮影します。
そして測った作業半径や吊り荷の重量などから性能表を確認して、
「何tクラスのクレーンなら、この作業ができるのか」
を考えます。
たまにですが、チョークを持っていくこともあります。
現場によっては地面に、
「この辺にアウトリガーが来る」
という位置を実際にチョークで描くことがあります。
そうすると、クレーンが実際にどのくらいのスペースを使うのかイメージしやすくなります。
重量は絶対にきちんと確認する
現調で絶対に確認しなければならないものの一つが、吊り荷の重量です。
重量はきちんと聞かないと、取り返しがつかなくなることがあります。
その重量をもとに、
何tクラスのクレーンが必要なのか。
そして、
その作業半径で本当に吊れるのか。
を判断するからです。
例えば「3tくらい」と「6t」では、当然条件が大きく変わります。
前の記事でも書きましたが、僕自身、事前に聞いていた重量と実際の重量が大きく違い、その日のクレーンでは作業できなかった経験があります。
だから重量については、「たぶんこれくらい」で簡単に考えないようにしています。
現調した内容は当日のオペレーターへ伝える
現調した人と、当日実際にクレーンへ乗る人が違うこともあります。
その場合、僕は現調で確認した内容をオペレーターへ伝えます。
現場の写真、作業半径、進入ルート、吊り荷の重量、セット位置、電線、地盤。
こういった作業に必要な情報を引き継ぎます。
そして僕の場合は、もう一つ。
「お客さんがどんな感じの人だったか」
も伝えます。
細かく確認しながら進めたい人なのか。
ある程度こちらに任せてくれる人なのか。
数字や写真だけでは分からない情報も、できるだけ当日のオペレーターに伝えるようにしています。
僕が現調で特に見落としたくないこと
現調では確認することがたくさんあります。
その中でも僕が特に見落としたくないのが、
進入ルート・設置場所・地盤・重量です。
まず、クレーンが現場まで入れるか。
次に、現場でクレーンをセットできるか。
そして、その場所の地盤は大丈夫なのか。
さらに、吊り荷の重量は正確なのか。
そのうえで高さや作業半径を測り、性能表を確認して、実際にそのクレーンで作業できるのかを判断します。
どれだけ大きなクレーンを用意しても、現場まで入れなければ意味がありません。
現場まで入れても、セットできなければ作業できません。
セットできそうでも、地盤に問題があれば置けません。
そして全部問題がなくても、重量と作業半径から能力が足りなければ吊ることはできません。
まとめ|現調は当日の作業を頭の中で一度やってみること
「クレーンの現調」と聞くと、
現場へ行って距離を測って、クレーンの大きさを決める。
そんなイメージがあるかもしれません。
でも実際には、それだけではありません。
現場へ向かう途中から進入ルートを確認して、大きなクレーンなら待機場所まで考える。
現場に着いたらお客さんと話をして、セット場所、地盤、建物の高さ、電線、吊り荷の重量、作業半径などを確認する。
必要であれば元請けさんにも確認してもらい、予定していた方法がダメなら別の方法を考える。
僕の中では、現調というのは、
「当日のクレーン作業を、頭の中で一度やってみる」
という感覚に近いかもしれません。
そして実際に現場へ行くオペレーターが別の人なら、その頭の中で組み立てた作業を、写真や数字と一緒にできるだけ正確に引き継ぎます。
以前経験した全面ピットの現場のように、現調したことで事前に問題が分かり、反対側の道路から作業する方法へ変更できたこともあります。
現調でどれだけ確認できるかが、当日の安全でスムーズな作業につながる。
僕はそう思っています。
また、実際のクレーン作業では現場の状況だけでなく、合図者との意思疎通もとても重要です。オペレーター側から見た「やりやすい合図」については、こちらの記事で詳しく書いています。



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